もみじの魅力

  もみじ、カエデはどんな植物?
  一年を通じて楽しめるもみじを知ってほしい 
  品種による用途と楽しみ方、品種の選び方 
    ハウチワカエデ系
    オオモミジ系
    ヤマモミジ系
    イロハモミジ系
  お気に入りの品種を見つけよう!
  紅葉画像集

  資料提供 小林槭樹園さま
  埼玉県川口市安行領家325
   Tel. 048(295)1491

 小林 和治さん
  東京農業大学造園学科卒業。
  小林家は代々モミジの収集家として著名で、
  江戸時代より小林槭樹園として創業
 

  

もみじ、カエデはどんな植物?

もみじとカエデの違いを考えてみましょう。もみじの語源は秋に葉が赤や黄色に色づき、変わっていく様子を古く「紅葉づ(もみづ)」と言った動詞から転じたことから由来しており、秋に冬支度する落葉前に色づく植物全般を総称して「紅葉づ」と行っていたようです。中でも葉の切れこみの深い赤ちゃんの手のようなイロハモミジ葉が大変美しく好まれ、鑑賞されたところから人の手を広げたか達の葉を代表してもみじと呼ばれるようになり、またカエデは「蛙手(かえるて)」が転じたものと言われ、カエルの水かきのある足の形のように切れ込みの浅い葉をカエデと呼ぶようになったと考えられています。しかし、このような区別は日本的な園芸上のことで、植物学的にはもみじもカエデも「カエデ」と言い、どちらも分類上カエデ科のカエデ属の植物です。もみじという科や属はありません。

カエデ科植物は日本を始め北半球に広く分布し、各地に自生しています。自生地の気候や地形、地質、海抜などの環境に適応して、葉の形や大きさ、葉色、樹形などの性質や形態が個々に変化、進化して雌雄同株、その中間の雌雄別株の品種や、また、熱帯にまで進出していったものは、落葉せずに常緑してしまった珍しいものなどバラエティに富んでいます。北米のサトウカエデ、ヨーロッパ産のプラタノイデス、ノルウェーカエデ、コブカエデ、中国産のトウカエデなど知られていますが、これに近い品種を含め、実に世界的にみても数多くの野生種が凝縮したように日本列島の中に自生し、特に日光国立公園の地域はカエデの自生する品種の密度が高いところで、秋の紅葉の名所といわれる由縁であります。

また、もみじとして親しまれているカエデは中国や朝鮮半島に数種の自生があるのみで、それ以外は日本列島にあり、わが国はカエデ科植物の宝庫と言ってもよいのです。

カエデもそうですが、もみじと呼ばれるカエデは日本の秋をまさに代表する植物です。これらの自生種の中からすぐれた色を出すものを拾い集め、より見ごたえのあるものや変わり葉の園芸品種を江戸時代から作りだし、栽培、コレクションされてきました。その中には秋の紅葉のよい品種と、芽吹きから初夏に鑑賞される春もみじとがあります。第二次世界大戦の時になくなってしまった品種もありますが、今日では品種を復元し、より美しい品種が沢山作られました。現在では、原種、園芸品種を合わせて四百種類以上になります。

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一年を通じて楽しめるもみじを知ってほしい

もみじといえば、だれもが紅葉の名所を思い浮かべ秋の紅葉の美しさは多くの人々が絶賛するところです。あまりにも秋だけ鑑賞するものとの思いが強すぎて、他の季節の良さがほとんど知られていないのは残念なことです。秋の紅葉は冬に向かい気温が下がり、生長が止まって休眠する前に色づき即、落葉の季節に数日で引き継がれます。秋は動きのないとても静かで透き通った美しさであるのに対して、春のもみじは生長の始めとしてとても強く華やかな若々しい枝や花、葉を次々と繰り出す動きのある世界です。芽吹きは一日で葉色と葉の姿が大きく変化するのです。秋の紅葉は気温、湿度、日当たりなどの紅葉するための条件がそろわず色づかない地域もありますが、春のもみじはすべて一様にどこでも春になれば芽吹いて楽しませてくれます。

最近では春もみじの園芸品種に人気が集まりつつあります。春もみじは関東地方ですと三月下旬から七月上旬ぐらいまで観賞でき、芽吹く瞬間から長い間楽しめます。植物学上、春の紅葉、夏の紅葉、秋の紅葉と季節によって赤い色に変化する状態を分ける学者もいます。秋の紅葉は緑の葉が赤や中間色、黄色までの比較的狭い範囲の色調です。色づいても短期間で観賞が終わってしまうが、春もみじの魅力は姿、色彩と共に動きのある美しさがあり格別なものがあります。初めて興味を持った人は、こんなに葉形や葉色がバラエティに富み、品種の豊かさに気づき驚かれると思います。これも江戸時代から園芸品種として作られ、鉢植や庭木として栽培されてきた品種が秋の紅葉のものより多いからなのです。

春もみじの魅力は冬の裸木から目覚めた小さな芽がやわらかい枝と葉を同時に芽吹くところから始まります。銀色に光る毛に覆われているものや、毛がなく艶のある若々しいフレッシュな葉色は、録葉系の品種では淡い黄緑、黄色、蛍光色に近い色を見せ、また濃い紅葉、赤色、オレンジ色、ピンク色の品種、更にほどよく淡かされ組み合わさって一枚の葉のなかに自然が作り上げた枝かと思われる個性ある品種が沢山あり、斑入葉の品種が多いものもコレクターの魅力になっています。黄緑や紅色の葉のベースに赤や朱色、ピンク色、オレンジ色、白色、黄色など多彩に葉の緑に入ったり、点状、散らばって入ったり、葉全面に入ったりなど目を見はるものが数多くあります。

春もみじの芽吹きは、朝夕で大きく姿、色、共に大きく変化します。芽吹き時はパーマネントがかったもの、扇を閉じたようなもの、やわらかく動きながら葉と枝を展開して、葉の切れ込みの深いもの、浅いもの、細いもの、大まかなもの、また、葉の大小様々です。更に開葉後も葉の色は変化し続け、開葉後にとてもよい色になる品種もあり、濃く、淡く斑入葉の品種によってはコントラストを強め、時には繊細に優雅にダイナミックに春の花にも劣らない華やかさがあるのです。

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品種による用途と楽しみ方、品種の選び方

用途と楽しみ方によって、合った品種を選ぶことが重要です。苗木や成木の購入は品種を多数扱っている詳しい園芸店や専門店で沢山ある品種の中から自分の好みに合ったものを、鉢植え、庭植えなどの用途によって、また、コレクション目的などの楽しみ方や観賞方法によって選び出してください。出きれば店頭にある沢山の種類の中から葉形、葉色、樹形など品種の特徴を自分の目で見て、よく知ってから求めると飽きずに長く付き合えると思います。園芸品種を原種から系統別に分けて葉や枝、樹形、特徴を知っておくと便利ですし、選択の際の大きな目安になると思います。

<ハウチワカエデ系> 写真

切れ込みの浅いカエデと呼ばれる葉を持つものですが、繁殖上、イロハモミジを台木に接木して苗を作ります。ウチワ状の葉のグループで大小の葉に芽吹きのとき、白い毛のあるものもあり、厚手の葉で早く秋の紅葉をします。「板屋名月」、「衣笠山」、「金隠れ」、「袖の内」などの園芸品種があります。

<オオモミジ系> 写真

大型の葉のグループで、葉肉は厚いので秋の紅葉がよく長持ちします。春もみじの赤色系や斑の入るものはダイナミックです。大型の樹形になるものが多く、「大盃」、「金蘭」、「夕暮」、「大鏡」、「濃紫」、「大明錦」などの品種があります。

<ヤマモミジ系> 写真

原種は日本海側に主に自生し、中型の葉のグループで多くの園芸品種があります。春もみじ、秋の紅葉と葉形の変わったものも多彩で、観賞価値の高いものや枝垂れ性の品種も含まれます。割合、秋の紅葉が早い「鴫立沢」、「水潜り」、「手向山」、「青枝垂れ」などの品種があります。

<イロハモミジ系> 写真

江戸の昔から多くの園芸愛好家に好まれ、切れ込みの深い可愛らしい小葉の仲間で、東北南部から本州、九州、四国などの普通の山野に自生分布し、イロハモミジ、タカオモミジなどの名で呼ばれ、自生地によって少しづつ変化が見られます。これらの中から実に多くの園芸品種が輩出し、斑入葉のものも多く、特に春もみじが多く含まれます。「茜」、「限り錦」、「旭鶴」、「舞森」、「千潮」、「清玄」などの品種があります。

以上のグループ特徴を頭において、鉢植か庭植えによって、スペースや他の植物とのバランスを考え、樹形は立性か、枝垂れがよいか、大きく育つものもあれば、あまり大きくならないか、葉の形は大、中、小、変わり葉などの好みの葉であるか、等々のことを考えていきます。ここで、一番大切なのが、春の芽吹きから秋の紅葉の変化はどうなのかということです。特にプランターや鉢、庭に何種か植え込む時には、品種の組み合わせをよく検討して一年通して楽しめるように組むことが大切です。春もみじは小さい樹でも十分楽しませてくれますが、秋の紅葉の品種は視線よりも大きな樹にして、色づいた時に光が葉を通過させて、空に透かす様に観賞したほうが、よりダイナミックに見応えがあるものです。

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